ビジネス上の目標を達成するために、施策の立案をするとき、どのように施策の優先順位を決めていますか?
複数アイデアは出してみたものの、どれから手をつけていいかわからない。
この判断はとても難しく、意思決定力は、ビジネスパーソンとしての力量をはかる重要なスキルだと思います。
ただ、こうした施策の優先順位の付け方にはコツがあると考えています。
そこで、今回は、施策の優先順位を考える上での軸について紹介したいと思います。
ずばり結論ですが、施策の優先順位をつけるには、下記3つの観点から総合的に判断し、施策の成功確度が高いものを見極めることが重要です。
①影響力(インパクト)
②操作可能性
③計測可能性
順に解説していきます。
影響力とは、その施策を実行することによってどれくらい目標達成に近くかという度合いのことを指します。
例えば、ECサイトの運営をしており、購入者を100人増やしたいというゴール(目標)があるとします。そして、キャンペーンメールを送付する施策AとWEB広告の出稿をする施策Bがあり期待効果は下記と仮定します。
施策Aの期待効果=2人が購入
施策Bの期待効果=10人が購入
この場合、影響力が大きいのは施策Bで、優先すべきなのもBと判断できますね。
そんなの当たり前、簡単だ。と思われたかもしれません。
しかし、実際この判断がうまくできない人がビジネスやマーケティングの現場では多くいます。なぜなら、”期待効果”というのはあくまで予測で、約束された確実な結果ではないからです。
そのため、実務においては、期待効果をいかに正確に予測できるかが成功の分かれ目になります。
予測は、他社の類似事例をリサーチ、過去の施策のデータ、経験則などから情報をかき集めて行います。
成果を高い打率で出せる人は、集めた情報を正しく解釈し、予測(仮説)を立てるのがうまいです。
一方で、優先順位をつけるのが下手な人は、この予測のための作業を怠ったり、そもそも予測立てをまったくしていない場合が多いです。
操作可能性とは、その施策の実行する際に、自社が介在できるコントロール範囲がどの程度あるかという点です。
例えば、先ほどのECサイトで、下記の新たな施策CとDのアイデアを思いつきました。
施策C:ECサイトのデザインの改善を行う
施策D:地元の新聞に掲載してもらう(広告掲載ではない)
施策Cは、自社が管理しているECサイトの改善なので、意思決定権が自分にあれば、100%自社の意思の範囲内でコントロール(操作)可能な施策です。
一方、施策Dは、新聞掲載するかどうかは、新聞社が意思決定する部分なので、自社でコントロールできる部分はとても少ないです。新聞記者の方と強固な関係が構築できているとかであれば、掲載確率はあがりますが、そうでない場合は、掲載確率は低いです。
このように、操作可能性の度合いによって、その施策の実現確度が左右されます。また、施策を早く展開できるか、実行スピードや柔軟性にも関わります。
施策は早く実行でき、かつ状況に応じて、柔軟に変更できるほうが良い点も踏まえると、操作可能性は施策の優先順位における重要な要素といえます。
なお、操作可能な範囲が狭いからといって、鼻から諦めてしまうのも考えものです。なぜなら、操作可能性が低い施策は、実現確度が低いかわりに、当たると効果(リターン)が大きくなるものが多いからです。
優れた戦略家は、操作可能な実現確度の高い施策を戦略のベースとし、それらをやり遂げれば目標を達成できる状態を描きます。その上で、操作可能性が低い施策も組み入れておきます。
こうすることで、前者で堅実的な成長を実現しながら、後者を起爆剤に、より大きな成長を実現できます。
つまり、操作可能性が高いと言うことは、結果も予測がつきやすいということでもあるので、想定の目標を大きく超えることはむずかしいでしょう。一方で、操作可能性が低いものも織り交ぜておけば、結果が跳ね上がる可能性があるということです。
操作可能性が低いものだけを集めるとよくないですが、戦略ポートフォリオのバランスを加味して組み入れればより良い結果を産むことができます。
計測可能性とは、その施策を実行した結果、目標に対する効果を計測することができるかという点です。
例えば、ECサイトで100人購入者を増やすという目標を掲げています。
そして、チラシをマンションにポスティングするという施策を実施しました。
数日立って、チラシを配った効果を調べようとしましたが、そんなデータはなく、結局これによりどれくらい効果があったかはわかりませんでした。
施策の実行結果の効果測定が設計されていない場合、その施策が良いのか悪いのか評価のしようがありません。
測れないものはマネージ(管理)できない
ドラッガーの名言でもあるように、測れないものは管理ができません。
そのため、また同じような意思決定をしないとなった場面で、チラシのポスティングというのが有効か予測がつかないということになります。つまり、①影響力の判断にも大きく関わってくるということです。
計測し、振り返るというのは、ビジネスにおいて基本中の基本です。そのため、施策は基本的には、計測可能な状態にする必要があります。
もちろん、施策によっては、計測が難しいものもありますし、正確性はある程度許容しながら進めるのが実務だと普通だと思います。
しかし、まったく評価しないというのは学習を放棄するのと一緒なので、定量的な計測は難しくても、定性的に評価できるように設計したりはするのが一般的だと思います。